清貧農民・杉山あきら 国会への道 121(とりあえず最終回)

 いよいよ開票日!


 夜7時に横手の事務所に行く。3階の会議室にマスコミが集まっている。
 テレビの映像をプロジェクターでスクリーンに映し出すつもりらしいが、配線がうまくいかず、みんなでコネクターを分解したり、テレビ線をちょん切り絶縁テープで巻いたりと悪戦苦闘している。
 「メスーメスのケーブル、誰か買ってこい!」などと叫ぶ人も。速報が始まるまでに映せるのか、と不安になるが、こんなところもわが党らしいとも言える。
 結局8時ギリギリになんとか間に合う。マスコミの人もホッと安堵。


 みんなでこれから深夜までテレビを観るのだろうか。何か飲み物とか欲しくなりそうだな、と思っていると、いきなり「では秋田選挙区です」と言う。
 そしてのっけから「出口調査の時点で当確が出ております!」と言って、「3区のみのり川信英さん、当選確実です!」
 全く不意打ちだった。早すぎる。会場がシーンとなった。カメラが僕の表情を捉え始める。


 間もなく記者会見のためにテーブルにマイクが準備された。もう敗戦の弁を語らなくてはならないのだ。実際の票もまだ見てないのに・・・。
 でも自分でも意外なほど冷静にしゃべり始めた。初めての選挙であり、自分が候補者として未熟だったこと。主張を全市民に浸透させていくことの難しさ。10代など若い層に比較的支持があったのは、ネットで見つけてくれて、純粋に政策で比較してくれたためではないか。60代の支持が厚かったのは、農村・郡部で出会ったたくさんの現役の農家の方たちを思い起こさせた。農民の怒りはやはり大きい。自分の主張自体は、大多数の市民に歓迎されるものだったと信じる・・など。
 「杉山さん、家が遠いんだから、もう帰ってもいいよ」と言われる。あんなにプロジェクターで苦労したのに、一瞬で終わってしまった・・。
 みんな慰めてくれた。「杉山さん、よく頑張ったよ!」「俺のところにも今までにない反響あったよ!」「初めて共産党にいれたって人、いっぱいいたぞー」
 藤岡さんはハグしてくれて、「落ちた者の気持ちは落ちた者にしかわからねえ」と言った。藤岡さんも先週苦杯をなめたばかりだった。


 家に着くとすぐに地区委員長から電話があった。
 「杉山さん、がっかりすることないよ。票が出始めたけど、わが陣営が今までに見たことないような数字が出てきてるから!供託金も没収は免れそうだし。あなたの訴えはみんなに届いてるってことだよ!」これで少しは気が楽になった。


 翌朝、県委員長から電話。「いやー、大健闘だね!ご苦労さん!あなたの村なんて37%もあなたに入れてるじゃない!比例も初めて共産党って書いた人がいっぱいいるよ。手が震えてたかもね、は、は、は!」とねぎらってくれた。
 しんぶん赤旗の記事には「杉山彰候補は、前回得票の3・4倍の38118票、得票率で22・05%を獲得し、同選挙区のすべての市町村で得票数・率とも前回比で大きく伸ばしました。同時に地元の東成瀬村では11・09%を獲得するなど3区の比例票も332票伸ばし、1市をのぞき、すべての市町村で得票数・率とも前進しました。」とあった。


 久々に作業着に着替え、田んぼに行ってハセの解体をやった。同じ集落のEさんが来て「くたびれたべ?ずいぶん票とったな。共産党にしちゃあ。いつもなば5パーくれえでねか?」
 うちの得票をよくわかっている。そしてポケットからドリンク剤を出して僕にくれた。優しい人なのだ。
 「みんな、しょうがねえな。あんな痛い目にあって、また自民や維新に勝たしちまってよぉ・・・。今度ロクさんの料理で残念会やるべぇ!」
 
こうして僕の「国会への道」はひとまず終わりを告げた。


最後までご愛読下さったみなさん、あまり感動にならなかったかも知れませんが、どうかご容赦ください。一年と2か月余り、121回、精一杯、自分の能力を総動員して書き続けました!また会う日まで!


終わり


 





政治を変えたい人!みんな集まれ! 杉山あきらホームページ

杉山あきらのホームページです。

0コメント

  • 1000 / 1000