ある日書店でたまたま「わら一本の革命」という本を見つけた。
著者の福岡正信さんは「不耕起・無農薬・無除草・無肥料」を実践する自然農法の教祖的存在。
自然はそれ自体がパーフェクトなものであって、人間が厚かましくも余計なことをすることでむしろ地力は落ち、環境は破壊され、作物も本来の育ち方ができなくなっていると主張する。落ち葉が積もることで肥え、ちゃんと木々を養っている山の土に学べと言う。
この本にはやられてしまった!
中学生時代のビートルズ、学生時代のマルクスのような衝撃を感じた。自分自身で、その自然の力を実感してみたいと熱望するようになった。
いきなり福岡さんのようにはやれないので、とりあえず次の春からは「移行段階だ」と考え、田んぼは手植えとし、除草剤もやめ田の草取りを始めた。
が、何反分もあるので、連日、一日中草をとっても追い付くものではなく、初めの方からまた生え始めてくる。特にこの年は、土着菌を培養した手作りのボカシ肥を入れたせいか、
コナギが異常に繁茂している。通行人から「ここは何の畑ですか?クワイ畑ですか?」と言われたりした。
親類からは「みっともない、今すぐ除草剤まけ!まだ間に合う。」と電話がくる。
結局、兄弟、その嫁さんまで頼んで草取りをワンシーズンやり通したが、草に負けた稲は成長できず、反収2俵という悲惨な結果となった。この時のことは未だに夢に出てきて、うなされることがある。
自分の甘さを痛感したが、方向として間違ってはいない、と思っていた。全く懲りてはいなかった。むしろ、ますます農業こそ本気で人生を賭けられる仕事だと思い込むようになった。ああ、どこか親類や兄弟に迷惑かけないで済むような新天地で、思いっきり、やりたいようにやってみたい、と思った。鶏も増やしたいし・・・。
そんな時、後に妻となるあおいと出会ったのだった。
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