清貧農民・杉山あきら 国会への道 83

 いま、マルクスが人気!(2)


「人新世の資本論」の中で斎藤幸平氏は、このまま資本主義が経済成長を追い求めていけば地球環境に無理が生じ、人間社会の破綻が避けられないことをデータと共に示し、その唯一の解決策が「脱成長コミュニズム」への移行だと主張する。
 「脱成長」と「コミュニズム」の組み合わせに違和感があるかと思うが、最新のマルクス研究によると、マルクスの最晩年の研究ノートには、彼が生産力至上主義ではいずれ地球環境がもたなくなることを予見し、エコロジーと前資本主義の共同体研究を始めていたことが記されているとのこと。
 そして、成長を目指さず、地球そのものを皆の共有財(コモン)として管理していくコミュニズムにこそ活路がある、と。
 本書には「欠乏の資本主義・潤沢なコミュニズム」とか「コミュニズムか野蛮か」などの目を見張る見出しがあり、「うちの党の書籍か?」と思ってしまう痛快さだ!
 「さすがマルクス、あの当時にエコロジーまで行っていたか!」と感動。
 この「エコな視点」からマルクスが自説に修正を加えていたことこそが「資本論」完成の遅れを生んだそうだ。
 斎藤氏は「未来への大分岐」という本の中で、マイケル・ハートやマルクス・ガブリエル、ポール・メイソンといった今を時めく知性たちと対談しているが、彼らもみなマルクスをベースにしてポスト資本主義の社会を模索していることに驚く。
 今、アメリカの若者で「資本主義より社会主義が好ましい」と答える者が多数派になっていると報道されていた。
 僕が20代の頃、国連英検の面接試験でアメリカ人の面接官に「ソ連、中国はマルクスが目指したものと違う」「日本はいずれ社会主義を目指すべき」などとつい話してしまい、「You are crazy !」とあきれ顔で言われたことがあったが、あれから時は流れ、今は「やっと時代が我々に追い付いてきたか!」と感慨深く思えるようになってきたのだ。
(おわり)



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